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優等生 花王 ~何がなんでも増配継続~ [株主総会]

まず好感が持てるのは、株主総会の時期が早いこと。12月決算の総会の殆どが28~30日開催、特に30日は集中日で、この日に開催されると、出席したくてもほとんどできない、ということになります。その点21日というのは他社とぶつかる可能性が極めて低く、株主主に優しい日程という印象。

総会会場への道すがら、地下鉄の駅の階段で、早くも何人ものおみやげハンターたちとすれ違いました。私はこういうことは、心が貧しい気分になるのでやらないけれど、花王の場合は経営的には許せる部類。なぜなら、配られているのは商品のサンプルという位置づけだからです。総会には出ないけれど、わざわざ投資先の商品サンプルを取りに遠くから足を運んでくれた、と思えばよいのです。

総会自体に変わった趣向も無く、とりたてて批判すべき点も見当たらず、優等生による優等生らしい株主総会でした。社長のプレゼンテーションは聴きやすく、業績は売上こそ微減ではありますが、為替の影響を除けば+3.2%と説明され、利益率もROEも向上。キャッシュフローも健全で、設備投資を十分賄っています。そして極めつけは、27期連続増配。配当性向はここ何年も50%を中心に推移していて、無理のない水準です。

中期経営計画では、この業種としては十分な成長意欲を示し、グローバルに存在感のある企業を目指す、と言っています。そう、グローバルな展開、という意味では、例えば格下だったはずのユニチャームの後塵を拝しているわけで、こんなに優等生の花王なのに、何となく物足りないと感じてしまうのは、正にここなのです。

そもそも遥か昔、多分20年ほども前に私が累投でこの株を買い始めた頃、Bioreなどの手ごろな価格の品ぞろえを持っていた花王に、私はとても大きな期待を抱いていたのです。中国が豊かになる過程で、きっと高成長するであろう、と。果たしてその後、中国は非常な高成長を遂げるのですが、花王の国際展開は、全然パッとしませんでした。買収したカネボウ化粧品が軌道に載らなかったばかりか白斑事件まで起こし、かかずらわっている間に、世紀の大チャンスをみすみす逃した感が拭えません。過去のことを言っても仕方がないのですが、どうしても毎回これに触れずにはいられません。グローバルな存在感へのこだわりは、自分たちが一番よくわかっているということなのだと思うことにしましょう。

企業理念として、真摯なモノづくりで「正道を歩む」というのも良いと思いますし、ステークホルダーに対しては、「何がなんでも増配継続」と、思い切った表現です。プレゼンの最後に見せられたイメージビデオは、ある小学校を舞台に、卒業を前に心を込めて学び舎を掃除しよう、という取り組みが紹介され、時節柄もあり、うちの息子の小学校が思い出されたりもして、うっかり涙ポロリと来てしまいました。

株主の質問、延々とありましたが、どれもそつなくきちんと回答されて、やはり優等生的。応援メッセージ的な発言も多かった。これだけ増配が続くと文句のつけようもないし、かく言う私も特段良い質問が思いつきません。なんとなく抽象的な話が多くなってしまって、長かった割に退屈なQ&Aではありました。最後の質問者が話し好きらしい御仁で、どうでもいいことを長々と話し始め、午後の予定も迫っていた私は、残念ながら途中退席したのでした。

「おみやげ品」の中から気になったものはこれ。泡スプレー式食器用洗剤。確かにおろし金や泡立て器なんかにはいいかも。

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株主は株主でいてくれるだけで・・・ [投資スタイル]

君は君でいてくれるだけでいい、なんて、古いラブソング歌詞にでもありそうですが、特別なことはしてくれなくていい、そこに居てくれるだけで十分、そういうことです。

株主になって良い会社を応援する、良い会社を支えて世の中を良くする、そういう考え方はもちろん素晴らしいし、私も多くの場合、保有株式についてはそう思って投資しています。株式投資をするにあたって、そうした意味づけが必要だと感じる人は多いかもしれません。日本では「株で利益をあげる」ということに、どうしても否定的なイメージが付きまといます。汗水たらさずに得られる利益には罪悪感を持つ人が多く、何らかの免罪符が必要なのでしょう。

でも本当は、株主は株主でいるだけで、株主としての社会的役割を果たし、それによって十分社会に貢献しているのです。特別に「良い会社」でなくっちゃ、とか、一生懸命応援しなくちゃ、とか思わなくてもよいし、企業を特定しないインデックスファンドであっても、その役割は果たされているのです。

なぜなら、株主は事業のリスクを負っているからです。企業が事業活動を行うためには資金が必要ですが、お金だけあっても事業はできません。事業に伴うリスクを、誰かが取らなければ、お金は事業活動に流れないのです。株主はその役割を果たしています。事業が不調ならば株価が下がって損失を被りますし、会社が潰れれば株式は文字通り紙切れになります。リスクの引き受け手がいるから、会社は事業活動を行えますし、その収益によって経済が成長するのです。

株主は、経済成長のリスクをとる、という重要な役割を果たし、その対価として収益を上げることが出来るのです。株主は株主であることにプライドを持って、投資すればよろしいのです。

株式は債券より儲かるのか、というお話 [株式投資色々]

2ヶ月ほど前の「リスクをとれば儲かるのか、というお話」の中に、「経済が成長している限り、株式の方が債券より儲かる可能性が大きい」と書きました。株式は上がったり下がったりするけれども、全体としては、債券よりも上がり方の傾きが大きいのだという、図で示せばこんなイメージのことを申し上げたわけです。

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でも、それは本当なんでしょうか。誰が株の方が儲かるって決めたんだ?…なんて、疑問に思う人がいても、ちっともおかしくはありません。しかしやっぱり本当なんです。そうじゃなくては辻褄が合わないんです。

たとえば、何か事業を始める自分を想像してください。設備投資や在庫投資の資金その他運転資金を、どうやって調達しますか?

もちろんまずは自分の貯金を下ろす、それから借金する、または誰かに出資してもらう。これらの選択肢から選んで調達し、事業資金に充てます。図のようなバランスシートの科目で言うと、自分の貯金と出資してもらったお金は右下の資本借金は右上の負債です。

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「負債」と「資本」は、当たり前ですが、性格の違うお金です。負債の方は、事業が上手く行っても行かなくても、利子をつけて返さなくてはなりません。どんなに事業で損が出ていても、借金取りはやってくるということです。

一方資本のほうは、返す必要がありません。「自己資本」とも言うとおり、会社にとっては自分のお金という位置づけです。返さなくて良いばかりか、利益が出ていなければ、配当だって払わなくてよいのです。新しい会社であれば、出世払いでいいよ、というわけです。

さて、こうして始めた事業が大成功して、たくさんの利益が出たとしましょう。出た利益の分け前をもらえるのは誰でしょうか。・・・当然、下の方の「資本」を提供していた人たちですね。会社が損したら一緒に損してあげるよ、と言ってくれた人たちに、その見返りがあるのであって、どんな状況でもきっちり返せ、と言っていた人に配分されるわけがありません。

これこそが、ハイリスク・ハイリターン、ということの意味なのです。損が出たらその損を負担する、その代り出た利益は頂く、ということです。利益が十分出ているならば、債権者よりも、資本の所有者である株主の方が利益が上がらなければおかしいのです。

企業の行う事業活動が経済成長の源泉であることを考えると、経済が成長している限り、一般に株式の方が債券よりも高い収益が得られる、というのはそういうことなのです。もちろん、個別の株について、または短い期間について言えば、そうでない事態も生じます。しかし株式全体として、十分に長い期間をとってみれば、株式の増え方のほうが債券より大きいということが言えるのです。逆の言い方をすれば、株式の方が債券より儲かるようでなくては、経済はダメなんですよね。

HISの株主総会、初めての出席 [株主総会]

先週木曜日(1月26日)の株主総会メモ。

この会社は結構長きにわたって保有しています。2001年の同時多発テロの時、ああもう当分この業種はダメかな、と思ったことを覚えています。当時は株価が割高だと思って少ししか投資していなかったのですが、少しだけだから、まあ売らずに持っていようか、ということでその時は放置することに。結果的にあの時は「買い」でした。経営の良い会社の逆境を買う、という一つの典型。とは言え、株式市場ではまだ比較的新参者でしたからね。そこまでの自信を持てなかったんですね。

株主総会には、今年が初めての出席。業績の説明は、ぼんやり聴いていると別に悪くはないような感じですが、数字は実はとても悪い。それでも心配ない、ということならそれはいいのだけれど、やはり数字の悪い時は、もっと丁寧に説明すべきです。だって営業利益は28%減、経常利益に至っては62%減ですよ。売上だって減っている。為替差損だとか、船舶の評価損だとか、さらりと触れるだけにしては、数字が大きすぎます。売り上げの減少も、燃料サーチャージを除けば実質2%の増収だそうだけれど、燃料サーチャージの説明ぐらい、少しはしたらどうなんでしょうね。

個人株主はどうせ数字なんか見ちゃいない、ということなのでしょうか。そうかもしれません。実際その後の質疑応答の時間、私が質問するまでこの決算の数字について、誰も質問しませんでした。でも、相手が素人だと思うのならむしろ一層、数字をちゃんと見てくださいね、と促すぐらいの態度があってもいい。特に、数字が悪い時に十分説明しないのは、たとえ悪気が無くても印象がよくありません。総会の資料も、必要最低限というかんじで、あまり親切とは言えませんしね。

そうは言っても、ちゃんと聞けば答えてくれます。今回減損を計上した船舶のような資産はこれの他にはない、為替差損は海外資産の評価損なので、これからも結構大きな幅で上下する、とのこと。それから、資金が必要であるにもかかわらず、自社株買いに資金を使い、一方で負債も増やしているのはなぜか。低金利で株式より債券での調達が有利だから、自己資本比率が下がってもそうすべき、ということなんでしょうか。…と聞いてみると、これだけの低金利だから今借り入れはすごく有利、との答えでした。配当利回りも低いんだから、株式のコストも高くないと思うんですけどね。自己株式の買い入れ=株主還元、という発想で、資本コストについてはあまり意識してなかったのかも、と思いました。借金が簡単に借りられるので、自己資本のありがたみも特に感じないでしょうし、業績も長期的に伸びているから、株式で調達する苦労なんかも感じなくて済むのかもしれませんね。

もう一つは、ロボットの働く「変なホテル」、人手不足問題を解決する切り札となるのか? という質問。人手は最初14人で切り盛りしていたものが、6人まで減らすことが出来ているのだそうです。目標は1ホテル2人。来月には舞浜にオープンするというから、ぜひ一度行ってみたいですね。

他の株主質問は、特に面白いものはありませんでしたが…やはり色んな方がいらっしゃいますね。社長をいちいち「あなた」呼ばわりする上から目線の株主とか、バリアフリーやCSRを焦点とした質問者、一番最後の質問者は延々と10問以上続けて質問してましたが、あれはちょっとルール違反ですね。もう最後だから多目に見るか、という雰囲気でしたが、会場の他の株主からは野次が。

可もなく不可もない総会でしたが、成長株にはよくあること。IR含むガバナンスは、良いに越したことはありませんが、私は別にガバナンス至上主義ではありません。成長企業は成長することで頭がいっぱい。ガバナンスが良くなるのは、勢いが衰えて来ている兆候のような気もします。衣食足りて礼節を知ると言いますからね。ジレンマというか、悩ましいところです。

(おみやげのカステラ、以前夫が持ち帰った時は、パッケージも「ハウステンボス」でしたが、今回は外に貼られたシールだけ。この文明堂の箱の方がお洒落でいいですね。)

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初心者only ~ 証券口座をどこに開く? [株式投資色々]


これを読んで下さる方の中に、まだ証券口座を持っていない、という方がどれくらいいらっしゃるか分かりませんが、最近質問されて、実際にお答えした例をご紹介。昨今この手の質問に対する答えは、特にネット上で検索しているような人に対しては、ネット証券がいいよ、ということになるのだと思いますが、まあ色んな考え方がある、ということで、参考にしてください。

因みに私は、むか~しから使っている、大手証券会社の口座をそのまま使っています。そもそも、皆が口をそろえてネット証券を勧めるのは何故でしょうか。
① 手数料が安い
投信などの品ぞろえが多い
③ うるさい営業担当がいない
…といったところでしょう。(ほかにもありますか?)

私の場合、
① たまにしか売り買いしないので、手数料の多寡はほとんど関係ない
② 投信にあまり興味がない
③ 相手も余計な投資アドバイス(と言えるかどうかはまた別として)をしても無駄と分かっているので、うるさく言って来ない
…というわけで、ネット証券のメリットが活かされないのです。

一方、営業担当者にはちゃんとお願いすべきお仕事があります。税金の申告をする時に、証券関係の税制については何でも聞いてしまう。大手の金融機関はちゃんと税理士さんがいますから、税理士の先生に聞いておいて、とお願いするわけです。そのほか、外債の取引なども、ほぼ営業担当者に頼っていますね。

そういうわけですから、このご時世でも、ネット証券ではないところに口座を持つ意味はあるのです。人それぞれの事情です。あとは、自分にとって便利な場所にあるいくつかの店舗に行ってみて、雰囲気がいいな、と思うところに決めればよいのではないでしょうか。そして気を付けるべきは、余計な営業をさせないこと。これだけは注意してください。


リスクをとれば儲かるのか、というお話 [株式投資色々]

リスクの話をしていると禅問答みたいになる、ということを前回書きましたが、禅問答ついでにもう一歩、リスクについてのお話を進めてみましょう。

「高い収益が期待できる金融商品を選ぶ際には、高いリスクをとらなくてはならない。」

これは、ごく標準的な「リスク」の説明と言っていいと思います。では、これはどうでしょうか。

「リスクの高い商品を買えば、高いリターンが得られる。」

先ほどの標準的な説明を、単純に逆にしたように見えますが、こちらは間違い。前回の話に出てきましたが、「リスク」とは「先が分からないこと」ですから、リスクのあるものを買っているのに、高いリターンが得られると分かっているとすれば、大きな矛盾です。

正しくは、「リスクの高い商品を買えば、高いリターンを得られる可能性があるというだけなのです。
そうであるならば、株式債券を比べた場合、株式のほうがリスクが高いからと言って、必ず株式のほうが高い収益が上がるとは言えないわけです。

…なんだか、リスクを取っても割に合わないような気分にさせられませんか?

ところが、です。十分時間をかければ、平均的には、よりリスクの高い株式のほうが、リスクの低い債券よりも高い収益が得られる…ということは、ほぼ間違いないとは言えるのです。(この点は日を改めてまた書くことにします、) 

そこに必要な条件は、経済全体が成長しているということと、企業の成長が経済の成長の源泉であるということ。言い換えれば、経済が成長している限り、株式のほうが債券より儲かる可能性が大きい、というわけです。

絵を描いて示せば、こんな感じ。株式のほうが伸びる角度は大きいけれど、上から下までバラつきがあるので、たとえば下図の縦線で切った時点では、債券の線の下に行ってしまう株式もある、というわけです。

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こうして見ると、今度はリスクを取っても割に合わない、という感じはしませんよね。

タグ:投資 リスク

ピンと来る「リスク」の説明とは [セミナー企画]

昨日は「良質な金融商品を育てる会(通称フォスター・フォーラム)」が主催する金融セミナーで、講師をさせていただきました。初心者向け、と銘打って、自分は金融に疎いと感じている方に、金融機関の敷居をまたぐ前にこのくらいは知っていてほしい、というお話です。

聴衆は20人弱、「真水」の参加人数はその3分の1くらいでしょうか。金融教育に関心があって、ご自分でも教える側の活動に携わりたい、という方が聴きにいらっしゃるパターンも多いので。こういう企画は、常に集客が大変です。間違いなく必要とされている、とは思うものの、本当に必要な人々に情報が届くのは、なかなか難しいものです。

常識問題から始まって、債券・株式・投資信託といった基本的な商品についての知識。中でも一番工夫のし甲斐があるのは、「リスク」の説明です。投資や資産運用において、「リスク」を理解することこそが真髄であると思います。巷にリスクについての解説は色々とありますが、普通なかなかピンと来ない、というのが正直なところではないでしょうか。

難しいのは、全ての事象が、起きる前は不確実であった、ということを、起きた後ではイメージできなくなるからではないかと思うのです。株式を買って損をしたら、「リスクの高いものを買ってしまったなあ」と感じることができますが、株価が上がっていい思いをしたら、同じように「リスクの高いものを買ったから、こんなに儲けることができたんだなあ」なんて、感じることができるでしょうか。プロはもちろん、それができてなくちゃいけないんですけれどね。

「リスク」を訳すと、どういう日本語が一番適切なのでしょう、という質問をいただきました。「変動幅」と説明する人がいるけれど、どうなのでしょう、と。確かに変動幅もリスクという表現に含まれますが、それは証券理論上の定義であって、「リスク」自体はもっと広い概念です。ぴったりの日本語は、現時点では存在しないかもしれませんが、あえて言えば「不確実性」、要は「どうなるか分からないこと」がリスクである、と言ってよいと思います。

そう、不確実だから、リスクがあるんです。必ず損する、と分かっているものはリスクがゼロなんですよ。そういうものは買わないから、絶対損しません。得すると思うから買うのですし、それが思い通りに行かないときに損するのです。リスクを解説しようと思うと、何だか禅問答みたいになってしまいますね。覚えておいてほしいのは、リスクの高いものは往々にして、とても得をしそうな姿で現れる、ということです、とお話しました。少しはピンと来ていただけたでしょうか?



岩城さんの新著、「お金」の考え方…積立投資には意味がないって? [投資スタイル]

お友達の岩城さんが本を出されたので、思ったことをメモしておきます。どこからどこまでが本のタイトルなのかよくわからないんですが、
そこ、ハッキリ答えてください!『お金』の考え方 このままでいいのか心配です。

山崎元氏との対談という形で、お金の絡むよろず身の上相談といったところ。男の価値観と女の価値観の対比を意識させられます。男っぽい考え方と女っぽい考え方を線で結んだならば、私の価値観はその中心より若干男寄りにあるような…。実際日ごろ多用しているフェイスブックなどは私を男だと思っているらしく、携帯端末の通信状態が悪くてプロフィール写真の表示が間に合わないときには、男のシルエットが現れるんですよ。

話がそれましたが、夫婦の関係に、金遣いや貯蓄、保険や投資といったお金の事情がどう絡むのか、というあたりが、この対談の面白さでしょう。具体的な事例が次々出て来て、話に親近感が湧きます。「必要貯蓄率」という指標は便利ですね。入る必要のない保険の話などは個人的にとても参考になりました。

投資に関しては、前々から山崎さんの書いてらっしゃる記事をネット上などで見かけて、どうも私とは話が合わないようだと思っていたのですが、やはり賛成できかねる部分は色々とありますね。ここで初めて見るわけではありませんが、積立投資に意味はない、という議論。岩城さんも喰い下がって聞いていらっしゃいますが、結局分かりやすい説明はいただけてない印象です。それもそのはず、積立投資は合理的だから。それを愚かな大衆の信じる民間療法のようにおっしゃっていることについては、はっきりと異を唱えさせていただきます。

これを読んで多くの個人投資家に迷いが生じるとすれば、困ったことだと思いますね。山崎氏の説を信じるのは自由ですが、それは少数派。積立投資は私だけではなく、多くのもっと立派な専門家の皆さんも推奨している方法です。常識のウソを暴く、みたいなことは、ちょっとしたエクスタシーでしょうから水を差すのも気が引けますが、やはり常識のほうが正しいと思います。

でも、山崎さんはなぜ積立投資に意味がない、とおっしゃるのでしょう。それだけではなく、歳をとってもポートフォリオを保守化させる必要なんかない、ということもおっしゃってますね。これも「常識のウソを暴く」式の議論ですが、根拠が十分にあるとは思えません。その理由、一冊通して読んでみると、何となく分かったような気がします。

山崎さんにとっては、どうやら株式投資は所詮ギャンブル、株式で資産運用するなんて本気では考えていない、ということではないでしょうか。資産形成はほぼすべて、現金債券でひたすら貯める。あとは遊びで株式を乗っける、という発想。そう考えると、おっしゃってること皆、辻褄が合います。

そうであれば、資産全体の規模にもよりますが、株式なんて資産のほんの一部、せいぜい1割、多くても3割程度を振り向けるに留まります。もう必要な金額は揃った、あとはおまけのリターン、というならば、一気にリスクを取ってしまえばよいのです。文字どおり必要な現金は既にあるのですから、リスクを取ると決めた額から現金をわざわざ残す必要はありません。全部株式に振り向けても、大した額ではないのですから構わないのです。

個人の資産形成を株式中心にやる、ということは、資産の半分でも7割でも株式で保有する、ということです。株式でギャンブルすることではありません。ご飯にかかっているふりかけではなく、白米そのものなのです。資産の大きな部分が株式であれば、高齢になるにしたがって減らす必要はもちろん出て来ます。生活するのは現金ですから、現金化する時に価値が大きく下がっていると困ります。現金は十分あるという人が、株式投資で遊んでいるのとはわけが違うのです。

そして個人の資産運用がベンチマークとするのは、常にインフレ率です。インフレ率を上回る資産成長が目標なのです。一気に買わなかったために、株式インデックスに大きく後れを取ってしまっても、別に気にすることはありません。そこが機関投資家とは違うんですね。個人はプロの投資家より劣っているのではなく、ベンチマークも目的も違うのですから、インデックス=ベンチマーク、という発想の身についた機関投資家の真似をする必要はないのです。山崎さんのおっしゃる「その時々で最適な額」はインフレ率に負けないパフォーマンスを実現する額ですから、案外小さいのです。ふりかけは一気にかけてしまってもいいけれど、白米はじっくり時間をかけて炊かねばなりません。

長期投資を信じるのをやめなさい、というアドバイスも、同じ文脈で理解できます。おっしゃる通り、長期投資だからリスクが低いというような言説は間違いです。期間が長期にわたれば、むしろリスクは高くなるとも言えます。長期投資を標榜するのは、それこそ株式を中心とした資産形成の考え方で、株式は高くなることも安くなることもある、短期間の結果で判断するのは意味がない、ということにすぎません。そして、たとえ今安くても、長い目で見れば十分挽回するチャンスはある。逆に今好調でも、悪い日も来るから心せよ、というわけです。だから、株式が主役なんて考えられない、という向きには長期投資の意味はあまりないのでしょう。

お金の話もさることながら、転職相談やキャリアプランのアドバイスは、興味深く読みました。人それぞれの人生ですから、こうしたらいい、ということはなかなか言えないでしょうけれど、要は合理的に、冷静に、計画性を持って、ということ。ファイナンシャル・プランニングと同じですね。

実際に銘柄を選ぶとき [投資スタイル]

実際に銘柄をどうやって選ぶのか、というお話。

こうやるのがいい、という正解はないのでして、自分に合ったやり方で選べばよいのです。そこでとりあえず、私はどうやっているのかというと、案外原始的に、四季報を見ています。昔ながらの紙媒体の1冊2000円ぐらいする四季報です。ネット上ではスクリーニング機能が使えたりもするのでしょうが、余計なものがたくさん引っかかって来て効率が上がらないんですね。完全にアナログですが、使い慣れてるものがやっぱりいいみたい。

文字通りパラパラと眺めるわけです。ページの一番上に3年分くらいの株価チャートが載っていますから、それで結構イメージが掴めます。安定的に成長している優良な会社は、何だかんだ言っても株価は右肩上がりです。業種ごとに並んでいるから、循環的に買われている業種、売られている業種も分かります。そんな中から目についたものを少し詳しく見ていくわけです。

株価が右肩上がりの美しい姿のものは、やはり要チェック優良な成長企業であることが多いので、収益性と成長性を中心に見ます。売上の成長度合い、利益率とその安定度、RoE(自己資本利益率)等々。良い企業はそうそう安くはないでしょうから、株価が少々割高でも仕方ありません。でも収益性、成長性を勘案して、妥協できないと思えば投資対象外です。主要な優良企業は長年やっているとさすがに頭に入っていますが、それでも、知らないうちにパッとしなかった企業が優良企業に生まれ変わっていたり、優良だと思っていたものがダメになっていたりということは、結構あるものです。

優良成長企業とまでは言えなくても、しっかり配当を払ってもらえるならば、私は文句は言いません。そこで当然ですが、配当利回りの高いものを探します。最近でいえば、3%ぐらいあれば投資対象として十分行けますね。そうやって挙がってくるものは、いわゆる割安株ということになります。

割安株の指標といえば、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)などはよく知られていると思いますが、配当利回りが一番確実、と私は思っています。何しろ半年か1年ごとに現金で入ってくるんですから。それなのに代表的な指標として重視されないというのは、1年以下の短期指向の投資家が多いから、またはそういう投資家しか証券会社が相手にしないからなのでしょうね。

配当利回りが高い場合、それが異常値じゃないかどうか、記念配当で一回限りじゃないかどうか、または事業環境が悪化して大幅減益、減配が予想されていないかどうか、というあたりを調べます。(原油価格が急落した時の商社株なんかそうですね。)配当性向も気にします。日本の会社は一般に配当性向を低めにして、業績が悪い時も減配せずに済むようにしたい、というケースが多いようで、それが良いことかどうかはともかく、配当の安定には寄与します。逆にいえば、一株当たり利益ぎりぎりまで配当しちゃってると、減配の可能性は高くなります。

と、この辺までは、基本的には数字だけ見ながら、四季報に付箋をひっつけていきます。その後、事業内容を見ながら、よさそうだと思う企業のIR(投資家向け情報)サイトへ行ってみます。IRの仕方は各社各様で、どこから見てもいいわけですが、私は財務データから始めます。売上、利益、資本比率、キャッシュフローなど主要なものが最低でも5年分は見つかるはず。財務指標として載っていなくても、有価証券報告書が載っているでしょうから、その中にあります。

ただ私としては、過去10年ぐらいの業績を見ないと、投資する気になれません。先日は任天堂のIRサイトに、1980年代前半から30年分以上も、売上と利益のデータが載っているのを見て驚きました。ここまで長いのは珍しいと思いますけれど、長期のデータはとても参考になります。IRのしっかりした会社なら、見やすい形で10年分くらいは載せているでしょうし、一覧表になっていなくても、決算短信や有価証券報告書が遡って見られるようなら、数字を抜き出して並べてみることはできます。

投資家への情報開示の姿勢も、会社の良し悪しを図る指標と言ってよいでしょう。当然、見やすければ印象はいいですよね。まあ大企業であれば、情報開示だけはしっかりしている、なんてこともあるかもしれませんけれど。一方、中小型株を発掘しようと思ったら、この辺りはあまり気にしなくていいのかもしれません。ただそれでも、10年くらいの過去は遡りたいものです。景気のサイクルは5年では回りませんからね。今であれば、リーマンショックの時にどこまで落ち込んだのか、分かると分からないでは大違いです。過去10年ならばリーマンショック直前のピークも分かるので、アベノミクス後の回復が、過去のトレンドの上にあるのかそこまで行っていないのかも分かります。

IRサイトで手に入らないような細かいデータや、足したり引いたり加工が必要な指標は、私はほとんど使いません。自分のための投資にそこまで労力をかける必要はないと思っています。尤もやってみればいろんなことが分かって楽しいかもしれませんので、今後も絶対やらないとは申しませんが。

こうして業績が安定しているかどうか、伸びているかどうか、といったことが分かってきたら、事業内容や企業理念、経営計画等々、文字の情報を見に行きます。これについては何を見るべきか、千差万別ですね。役に立つものも立たないものもあります。結構アニュアルレポートを見たりもします。IR以外のメディアも利用します。Wikipediaも案外参考になります。こうしたものを読んでいるうちに、その会社のことが気に入ったり、好きになれなかったり。

そんなことをしながら、以前「私流 株式投資」で書いたように、「配当金額が長期にわたって増えていく確率はどのくらいだろう」と考えるのです。かなりの確率で配当が増えていくと思えば、現状の配当利回りがそれほど高くなくても、よい投資になるでしょう。逆に、配当利回りが高くて事業が安定していれば、配当が増えていくことを特に期待できなくても、それはそれでよい投資です。成長しない企業であれば、株価が高くなった時に売る、という選択も出て来ます。

いわゆる成長株投資を全くやるまい、と思っているわけではありませんが、成長性を予想するのは非常に難しいのです。特に何らかのテクノロジーをベースにした事業の場合、テクノロジーの評価をせねばならない。それははっきり言って無理。新しいテクノロジーや産業分野であれば、未来も明るいと同時に、競争も非常に厳しいでしょう。夢を見てする投資ならば、宝くじでも買うつもりで。ただ、外れてもなかなかゼロにはなりませんから、宝くじよりはずっといいでしょう。

個別株投資の奨め ~投機ではなく [投資スタイル]

一般的に、アクティブ投信はインデックス投信に勝てない、ということになっています。数字を集めて平均を取ると、インデックス投信のほうが成績よいというわけ。その理由は色々と考えられるのですけれど、この事実をもってして、個人のアクティブ投資を否定する理由には全くならないでしょう。

アクティブ投信が不利な理由の一つは、インデックスよりはるかに高い手数料です。私だって、高い手数料を払うのは出来れば避けたい、そんなことは当たり前です。ただ、インデックスに投資するには投信を利用するしかないけれど、アクティブ投資ならば投信を買わずに個別株を買ってもいいわけです。昨今はNISA導入のお陰さまもあって、最低単位百万円以下は当然、50万円ぐらいで買える銘柄もかなりたくさんありますから、個人でもそこそこの銘柄数を持つことは可能なはずです。

インデックス投信は、株なんかたいして興味ない、という人にはとても良い商品だと思います。コストが安いって最強。…では運用手法としては、インデックスってどうなんでしょう。

たいていのインデックスは、時価総額ウェイトでできています。多分一番客観的ですし、基本的に放っておけばいい方法ですから、コストを安く、という目的にもかなっています。ただ、それ以外に特に意味はないとも言える。時価総額ウェイトで買う、ということは、高くなったものは高いまま、安くなったものは安いまま買うってことです。一つの銘柄を時系列で眺めれば、その銘柄が相対的に一番高くなったところで一番たくさん買い、一番安くなったところでは一番少なく買うことになります。

これ、アクティブ・ファンドのマネージャーだったら、とってもへたくそなはずですよね。そんな運用をしているインデックスファンドに勝てないとしたら、何とも情けない話です。現実は色々と、ファンドマネージャーにも同情すべき事情があるわけですが、その話はまた別の機会にするとして、ともかく少しでも資産が増えるように、ということだけをまじめに考えて運用すれば、インデックスより良い運用ができて当たり前じゃないか、と思ったりするわけです。

時価総額ウェイトという手法は、保有比率が客観的に細かい数字まで計算できますから、よく知らない人にはすごくサイエンティフィックで確かな運用手法に見えるのかもしれません。ポートフォリオを地域分散する時も、「日本株は3割くらいで」というよりも、「時価総額ウェイトで8.5%です」とかいう方が、なんだかカッコいいですよね?

パブリックな存在である投資信託は、客観的であることも重要な意味があるでしょう。でも個々人にとっては、自分で納得のいく自分だけのポートフォリオがあればよいのです。自分がいいと思えば、それが正しいポートフォリオ。誰に言い訳する必要もありません。

もう一つ付け加えると、例えばTOPIXなどは、全ての株式を自動的に含むので、かなり純粋なパッシブかもしれませんが、多くのインデックスは、時々銘柄の入れ替えを行っています。そういう意味では、一定の基準に基づいたアクティブ投資の側面もあるわけです。銘柄選定にあたっても客観性が重視されますから、だれが見てもOK、という選択になる傾向があるはずです。これもアクティブ運用としては、決して上手いとは言えませんね。

アメリカのSP指数で、過去の銘柄入れ替えを遡って、もし入れ替えていなかったらパフォーマンスはどうだったか、という試算を見たことがあります。入れ替えたことでパフォーマンスが悪くなっている、という結果でした。新しい企業など、世間に認められてある程度大きくなったものが選ばれ、将来性が無さそうだ、ということで安くなったものを外すわけですから、まさにアクティブ運用をしているわけですね。

インデックスというのは、市場全体を客観的に代表することが目的で、良いパフォーマンスを上げることが目的ではありませんから、こうしたインデックスの運用を批判するつもりは全くないのです。申し上げたいのは、インデックス投資が、運用手法として別に優れているわけじゃあない、ということなのです。

もちろん、アクティブ運用で優れた投資信託を探すという方法もありますが、今や一般の個人でも、プロのアナリストに負けないくらい、情報を手にすることができる時代です。興味と関心のある個人投資家は、リスクについてよく理解したうえで、個別株の投資にもぜひ挑戦してほしいですねえ。厚みのある投資家層の存在こそ、よりよく機能する健全な株式市場を支えるのだ、と信じています。


念のため、アクティブ運用とは→ http://www.toushin.com/faq/invest-faq/active/
解説を載せているサイトはいくつもありますが、これが分かりやすいかな。
「要は、人間の判断による運用、ということです。」



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