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株しかない? [株式投資色々]

株価が高値を付けているからなのか、最近ネットで「株しかない」という本の広告を見かけて、またまた煽るようなタイトルつけるんだから、いやになっちゃうわ、と思ったのですが、考えてみると私も同じようなことを言っているんですね。先日も友人から、老後に備えての相談事。よくある類の質問でしょうが、「減らしたくはないんだけど、どうしたらいい?」と。(ちなみにその書物は読んだわけではないので、内容については全く存じません。単なるタイトルの印象。)

減らしたくないけど増やしたい。ご要望に沿いたいのはやまやまですが、今、元本保証がありながら、資産が増えるほどの金利がつくものは、はっきり言いますが、無いわけです。それをはっきり言いたくないものだから、アイデアを絞って色んな金融商品が考え出されているのでしょうが、そういうものは無い、というのが基本です。国債や銀行預金の金利がかぎりなくゼロに近い時、何をどうこねくり回しても、無から有は生まれないのです。

金融収益というのはリスクに応じた金利です。金融業というのはリスクに金利という値段をつける仕事、と言ってもいいと思います。金利という形の値段も、ほかのものと同じように市場で決まりますから、同じだけのリスクには、同じ値段しか付きません。減らしたくない、銀行預金や国債と同じように元本を保証してほしい、と思えば、それにつく金利も同じようなレベルになります。それをごまかすために色々な工夫をすれば、それだけコストもかかるはずですし、金利に応じたリスクをどこかでとっているはずなのです。

ちょっとの間も減らしたくないならば、増やそうと思ってはいけません。「減らしたくないんだけど」…という相談に対する答えは「銀行預金か国債」ということになります。現状、個人向け国債で0.05%ですから、これをどう割り振ってもほとんど何も起こりません。それは嫌だというならば、投資信託も含め「株式を買うしかないんじゃない?」と私も答えるでしょう。もちろん、人によって、何のリスクをとりたいかは違います。外国為替がいいとか、不動産がいいとか、いろいろあるでしょう。個人的には「株式がいいんじゃない?」と思いますが。



ご参考→ 株式は債権より儲かるのか、というお話
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悪い話が出た時は [株式の個別銘柄]

ここで個別の銘柄をとり上げることなんて、そう頻繁にはやっていないにもかかわらず、日産の配当利回りについて書いた直後に大規模なリコールのニュース。リコールは車には付き物だとはいうものの、あまり気分のいいものではありません。悪いニュースには違いありませんから。

以前から書いていることですが、株式を保有したら、気にするのは配当が減ることだけ。株価が下がることを心配するのではなく、配当が減ることだけを心配するのです。だからこういう悪いニュースが飛び込んできた時も、それによって配当が減るかどうかだけを考えるわけです。

新聞記事によれば、リコールにかかる費用は250億円以上とのこと。「以上」というのは気になりますが、さすがに見込みの5倍や10倍に膨らむようなことはないでしょう。リコール以前の会社発表では、今期の純利益は5350億円、これに対して費用が250億で済めば、純利益の4.6%ということになります。その倍に膨らんだならば9.2%、1割弱ですね。そのくらい見積もっておけばとりあえず保守的と言ってよいでしょう。

さて、純利益が1割これによって吹き飛ぶとして、配当には影響があるでしょうか。日産自動車の配当性向は、先ほどの予想純利益5350億円に対して38.7%、これは、一株当たりの予想配当=53円 を、一株当たり純利益=136.8円 で割って算出します。つまり純利益の4割弱が配当に回っているということです。ということは、純利益が1割減っても、配当を減らす必要はありません。

それでも配当が減るとすれば、それは今回のリコールが、今後長きにわたって悪影響を及ぼすという判断をする場合でしょう。今回の事例を新聞等で読む限り、製品自体に欠陥があったというわけではなく、製品の検査に際して法令順守を怠ったということです。今後は製品検査の体制を改善しなくてはいけませんが、それは会社として当然のこと。適切な対処を期待してもよいと思います。

ただ、会社がコンプライアンスに甘い体質である、という印象は残りますね。それで会社の評価が低くなるということはあり得ます。ここで甘ければ、ほかで似たような失敗をしているかもしれない、という発想にもつながります。実際に似たような失敗が起こり、配当を減らさざるを得ないようなダメージがあれば、そこで初めて、この投資は失敗だったかな、ということになります。印象の悪化のみで株価が下がれば配当利回りはもっと高くなるので、投資額は増やすのが正しい、ということになりますね。

そんなことを考えながら、投資するのかしないのか、増やすのか減らすのか、…どちらの答えが正しいというものではありません。自分がどういう期待を持って、どんなリスクをとって投資判断しているのか、ということが大切です。


ご参考 私流 株式投資

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日産自動車の配当利回り [株式の個別銘柄]

2~3日前、株式関連の番組で、視聴者の投稿なのか、ジェレミー・シーゲルの「株式投資の未来」を読んだら配当を重視して株式投資すると書いてあってショックを受けた、という話をしていました。投資の意味が全く分からないまま投資している人が、相変わらず多いということなのでしょう。お陰さまで、それほどハイリスクでもないのに配当利回りが高くてハイリターンな投資対象が、今も放置されているわけです。皆が配当を重視して投資するようになったら、こうはいかないかもしれません・

現在の株式市場で、誰もが知っているような大企業で最も配当利回りが高いのは、多分日産自動車じゃないかと思います。会社発表の今期配当で計算して、現時点で4.6%です。どうしてこんなに高いのでしょうか。投資家が配当を重視しないからと言っても、いくらなんでもねえ、と私は思うのです。そこで、こんなにも配当利回りが高いのはどうしてか、理由を色々とつけてみました。

理由をつける前に、まず業績を見てみると、減益ではありますが、売り上げが減るわけではないし、そもそも配当性向が低かったこともあり、配当を予定通り支払うのに全く支障はなさそうです。しかも増配です。会社予想が53円/株のところ、四季報では53-59円ということですから、会社発表よりも多いかも、と予想しているわけで、上限の59円もらえたら、利回り5.1%です。すごい!

ここ数年の配当の推移を見ると、かなりのペースの増え方です。四季報のページで見られるのは4期前までですが、その時30円ですから、今期53円として、年15%のペースで伸びてきているわけです。この増配のスピードが速い、ということが高配当利回りの要因の一つでしょう。株価が増配ペースについてきていない。業績がそんなに伸びていませんからね。株式市場はいつのころからなのか、もうずっと成長志向なので、どうしても売上や利益に反応します。日産の業績も悪くはありませんが、今後もずっと伸び続けると簡単に予想してくれるほど、マーケットは甘くありません。

さて、まず「自動車」という業種。このところEV(電気自動車)や自動運転技術の話題が盛んです。技術的な革新が起こりそうな予感に、投資家も浮足立っているといった感がありますね。その中で既存の自動車会社は攻め込まれる立場にあるわけです。台数の普及も地域によってはまだまだ進むと思われますが、それよりも技術革新で苦境に立たされるのではないかという思惑の方が強く働いているようです。それを反映してか、日産に限らず自動車メーカーの配当利回りは全般に高めです。

未来の車がどうなるか、そして既存のメーカーの立ち位置がどうなるか、あまり正確に見通せるとは考えないほうが身のためです。予想については謙虚に参りましょう。現在のマーケットの見方は、少し既存のメーカーに厳しすぎるような気がしますが、どうなんでしょうね。自動車というのは、なにしろ家電などと違って人命を預かるものですから、動力系の変化だけですべての勢力図が変わる、というものでもない可能性はあります。また、電気自動車には電力が必要だということも忘れてはいけません。巨大な人口を抱える中国もインドも、発電には環境問題やインフラの問題を抱えていますよね。大きく勢力図が変わるにしても、時間がかかることはほぼ確実なのでは、と思います。

それから「日産」という会社への評価。超長期的なスパンで見れば、最先発のメーカーではあったものの、トヨタをはじめとする後発のライバルに追い上げられ、追い越され、記憶にある限りずっと右肩下がりの会社、というイメージです。バブル後日本経済が低迷すると、経営は潰れそうなところまで悪化して、仏ルノーの傘下に下りました。そんな会社ですから、基礎となる評価はどうしても低くなりがちなのです。また、規模も非常に大きいので、簡単に変われるとも思ってもらえないでしょうね。株価の評価というのはどの業種でも、そう簡単にランクが変わったりはしないものです。

日産の場合、もう外資系ですから、海外自動車メーカーの配当利回りの影響が同業他社より大きい可能性もあります。業種が当然同じですから、海外メーカーだって同じように厳しく見られているわけです。親会社のルノーは3.8%とのことですが、ドイツ車は、スキャンダル渦中にあったVWはともかく、BMWもダイムラーも4%台です。アメリカ車、GMは3.8%、フォードは5%に載っています。(データはいずれもBloombergより。) その中で4.6%のNissan、というのは、しっくりくるというべきかもしれません。

こうして見てくると、日産の4.6%というのは、特におかしな値ではない。他の日本メーカーとのバランスで、もう少し低くてもいいのかもしれないけれど、国外に目を向けると、そんなに下がらないかもしれない。つまり、配当利回りが高いという理由で株価が上がるということにはそれほど期待せず、この高い利回りを目的に買う、ということなら良さそうです。もちろん、業績が伸びて配当も増えれば株価は上がるでしょうね。この配当利回りの水準は、国際的に見ても高い方ですから。



ご参考 → 私流 株式投資

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コーポレート・ガバナンスの四象限 [株式投資色々]

先日のセミナーの準備で、コーポレート・ガバナンスの話題に触れようと少し調べていたら、良く整理されていてわかりやすい図を発見したので、ここにもちょっと紹介しましょう。(クリックで拡大)

CorporateGovernance(L).png

これは「比較コーポレート・ガバナンス論」(菊澤研宗著)という本にあったものです。
「コーポレート・ガバナンス」はアベノミクスの看板のひとつなので、ここ数年はかなり人口に膾炙しているのではないかと思いますが、これがコーポレート・ガバナンス、という説明はなかなか難しいのではないでしょうか。実際色々な側面があって、非常に幅広い文脈で語られています。

多くの方は「コーポレート・ガバナンス」と聞いて、環境保全のために植林活動してます、とか、女性の働き易い職場環境を整えてます、とか、積極的に社会を良くするための努力をしている企業を思い浮かべるかもしれません。とりたてて積極的にというわけではなくても、法令遵守=ルールを守ること、がガバナンスと考える人もいるでしょう。

一方、アベノミクスで特に目立つのは「ROE」の重視、そして「社外取締役」の任命などではないでしょうか。ROE(資本収益率)の高い、つまり資本を効率よく用いて利益を稼ぐ会社や、社外取締役が経営に目を光らせている会社が、ガバナンスの優れた会社であるという考え方です。

これらは、社会を良くする努力や法令遵守とは、かなり違うように見えます。「コーポレート・ガバナンス」と言っても、様々な側面があるので、どのように考えればよいのか、混乱しそうですが、上掲の図では、コーポレート・ガバナンスの考え方を、「企業対社会」という視点「企業対株主」という視点に分けています。そしてそれぞれが、倫理の次元効率の次元に分かれ、全体が四象限に整理されています。

環境保全や職場環境の整備は、企業と社会の倫理問題ということになりますね。法令遵守もそうです。企業経営は社会に対して誠実であれ、ということ。これに対してROEの重視は、企業と投資家の効率問題、ということになるのでしょう。そして社外取締役の任命は、企業と投資家の倫理問題。社外取締役というのは、経営者が投資家に対して誠実な経営をしているかどうか監督する、という性格のものですから。

ROEの重視企業と投資家の効率問題、と書きましたが、アベノミクスの文脈では、社会の効率の問題としてとらえているように感じます。企業のパフォーマンスが良くなって投資家の利益が増えることより、それによって経済の成長力が高まる、ということに関心が向けられているようです。「投資家」の多くは実は国民自身でもあるわけですが、投資家のための政策では支持率に繋がらないという政治の現実を考えれば、その点が強調されづらいのは無理もありませんね。

コーポレート・ガバナンスのどの側面に光が当たるかというのは、国の事情や時代背景を反映しています。今日本でROEと社外取締役の側面が浮かび上がっているというのは、そこに課題があるからだとも言えます。特にROEの重視は、まさに日本企業の経営に必要とされていた視点でしょう。個々の企業にとっても、それが経済全体に及ぼすインパクトについても、ROEの水準が引き上がることは、大きなメリットがあると思います。

アメリカでは、社外取締役に大きな権限を与えることによって株主の権利を守ることができるという考え方が、一般的なようです。そのことの是非はともかく、そう考えるようになった経緯は、それなりの歴史的背景があります。日本でも法改正により、株式会社は社外取締役を置くよう求められていますが、アメリカとは全く違う歴史をたどっている日本企業で、実際に任命されている社外取締役は、かなり性格の異なるものであるように見えます。

コーポレート・ガバナンスは、永遠の課題とも言えるかもしれません。他所から借りて制度を作るようなものではなく、手探りで追究していくもの。日本では日本なりの、コーポレート・ガバナンスの歴史ができていくのでしょう。


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株式投資ってどういうこと? というセミナー [セミナー企画]

8月の下旬に、セミナーをアレンジしてくださる方があって、株式投資についてお話しすることになりました。メインタイトルは「株式投資ってどういうこと?」。1月にお話しした時と同じタイトルで、中心となるメッセージは同じですが、投資周りの話題を少し更新してお話しします。

株式投資についてお話ししたい、ということをずっと昔から考えているのですが、それをメインの生業にしようと思うと、短期志向の話をしなければなりません。そしてこの先3カ月や1年のうちに金利が上がるとか下がるとか、株式が10%上がるとか下がるとか、または上がる株はこれ!とかいう話をしなければなりません。お話したいのはそういうことじゃあない、というのは、このブログを読んでくださる方にはすでにお分かりだと思います。だから、どこかからお給料をいただくためにあくせく働くようなことをしなくてもよい身分になって、初めてこういう話をしているのです。

私がお話したいのは、株式市場の本来の姿投資というものの考え方についてです。株式市場でギャンブルするのはご自由にどうぞ、ですが、それは株式市場の姿のほんの一部であるということ。株式市場は経済の成り立ちに非常に重要な役割を担っているということ。ですから同時に株式投資家は、経済に重要な貢献をしているということ。また、株式には価値があるということ。その価値は企業とともに成長するということ。その成長の恩恵を、多くの投資家に享受してほしいということ。…

株式に投資するってどういうことかわかったうえで、投資信託を買おうと思うならばそれもよいと思います。でも、興味がおありなら、直接株式に投資する、ということも考えてみていただきたいですね。個人投資家として無理なく資産を運用するにはどうすればいいか、という話です。個人投資家にとって、投資信託はもちろん重要な投資商品です。でも、投信業界を長く見てきて思うのは、この業界が満足のいく水準まで良くなるのを待っていたら年を取っちゃう、ということ。老後は待ってくれませんからね。

(1月のセミナーについてはブログには載せていません。Facebookに写真がありますが。)

8月のセミナーにご関心のある方はこちら。
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パリ祭・フランス革命・歴史の蓋然性 [市場と経済色々]

7月14日といえばパリ祭。フランス革命の発端となったバスチーユ襲撃事件のあった日ですね。(我らベルばら世代にはお馴染みです。)

高校のころ、世界史の先生がこんなことをおっしゃいました。
「この日パリはものすごく蒸し暑かったんです。だからみんなイライラしてた。そうじゃなければ、バスチーユを襲撃しようなんて、思わなかったかもしれないんです。そうしたら、フランス革命も起こらなかったかもしれないの。こういうのが歴史の蓋然性ね。」と。
私は「蓋然性」という聞きなれぬ言葉に少々面食らって、その時はピンと来たというよりは、ちょっとおもしろい、というぐらいに思ったという覚えがあります。

長じて資産運用にかかわるようになり、リスクとどう付き合うかという課題と日々向き合うようになって、よくこの言葉を思い出すのです。将来を予想するというのは、もっと正確には、将来「起こり得ること」を予想しているのです。そしてリスク管理するということは、その起こり得る確率を想定することなのです。

あのフランス革命でさえも、起こる前は、蓋然性に過ぎなかった。つまり何%かの確率で起こり得る事象のひとつに過ぎなかったのです。学校で習う歴史的な出来事は、あたかも必然的に起きたかのような錯覚とともに記憶されますが、実はどれも、起こらなかったかもしれないことばかり。誰かが気まぐれでとった行動が、大きく歴史を変えることもあるわけです。それを「クレオパトラの鼻」と表現することもあるのでしょうが。

日々生じている市場での出来事も、常に理由があって必然的に起きたように解説されます。しかしどの出来事も、起こらなかったかもしれないのです。起こるか起こらないかわからない、そのことを「リスク」というのですね。そしてそもそも「金融」というのは、そうした「リスクに値段をつける作業」と言っていいのではないでしょうか。

毎年7月14日が来ると、改めてこうしたことを思い返すのです。歴史の蓋然性について語ってくださった恩師は、今も御年九十三でご健在です。


似たようなことを最近書いていました。→ リスクと確率

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6月28日 シーズン最後は地味な倉庫会社 [株主総会]

シーズン最後は「ヤマタネ」という倉庫会社。自分のポートフォリオでは比較的新顔だ。1924年創業というから、もう100年近い老舗で、数字を見る限り、特に成長しているような企業ではなさそう。全体に売上は減少しながらも、不採算案件を減らすことによって利益率は改善傾向、というのがここ数年の業績動向だ。ただ売上げの半分近くが、「コメの流通」という謂わば商社のような部門、残り半分は物流や情報サービスや不動産賃貸で、利益率の水準が全然違う。コメの流通というのは、どのくらい収益性を高められるものなんだろう。知識不足で何とも言えないが、投資対象としてはおおよそ魅力的な事業には見えない。

株主総会は、想像していたよりもずっと盛況だ。業績の勢いとは不釣り合いなぐらい。元社員と思しき株主に交じって、私のような単なる個人投資家らしき株主もちらほら。女性もいなくはない。事業報告・今後の展望とも、招集通知に載っていることを淡々と朗読して終わったが、株主質問は意外にも活発だ。

初めの質問者は、念入りに準備した書付を読み上げて質問。話の内容から、会社のOBとわかる。各種メディアで伝えられたことの詳細について質問している。取得した土地の活用計画であるとか、残業時間をどうするかとか、「プラットフォーム型ビジネス」についてとか、盛りだくさんだ。そして、株主からどんどん意見の出るような株主総会になるよう工夫してほしいとの要望。なんと模範的な株主であることか。長年勤めあげた古巣への愛社精神なのだろう。

社長が回答する中で、自社の競争力をどう捉えているかが理解できたし、既存の事業だけを続けていてはいけないという問題意識が十分に伝わってきた。気になるコメの流通については、他社も苦労するコメの配送だから、他の食糧へ広げていくことができるんじゃないかという話。ぜひ形にしていただきたい。そのほか物流と不動産事業のシナジーを活かすとか、どちらもIoTの技術が不可欠になるとかいった展望が参考になった。

次は、PBRが大きく1を割っていることについてどう思うか、という質問。私から見れば答えは簡単。配当を倍にすればよい。配当性向低すぎ。社長からはこれといった回答はなかったが、さらに次の株主が、配当が少なすぎるのではないか、と質問。配当性向は30%あっていいと思うので検討・努力いたしますとのこと。配当性向は3割よりももう少し高くていいと思うけれど…。

その次は、「株主優待で貰うカレンダー、せっかくいい絵なのに印刷が雑だ」とのご意見。発言したのは、質疑応答の直前くらいにずい分と遅れて入ってきた女性、その堂々とした態度に社長もたじたじ。きっとこの方も長年勤めあげた方で、彼女からは若旦那の社長なんて鼻たれ小僧くらいに見えているのかもしれない。印刷は山種美術館に伝えるとして、次の株主の、「優待でヤマタネブランドのコメが欲しい」という要望には、これまでも検討した結果踏み切っていないのだとの回答。タダでさえあまり儲からないコメの流通なんだから、これ以上負担を強いるのはちょっと考え物、というのが私の感想。

地味な倉庫会社の、記念品が出るわけでもない、展示物があるわけでもない株主総会に、これだけ株主が集まって真剣な質疑応答があるというのはうれしい驚き。この先投資対象としてもっと魅力的な会社になればもっと嬉しい。

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6月27日 優雅なだけじゃない、DOWAホールディングス [株主総会]

自宅から会場まで徒歩圏だということもあり、都合がつく限りは出席している。関連会社でもある椿山荘(藤田観光)で過ごすひと時が楽しみであることも確か。その優雅な雰囲気は過去のレポートお読みいただくとして、今年は去年のようにおみやげハンターが目立たなかったのは良かった。おみやげ自体は例年通り配られたが、世間一般おみやげの配布が減っているので、もらうことだけを目的とした総会巡りは、もしかするとピークアウトしたのかもしれない。

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株主総会自体にそれほど盛り上がりはない。業績はおおまかに言えば横ばいで、目立った傾向も無かった。株主総会の後に事業説明会があると分かっているので、事業についての質問はあとで聞けばよいということもある。それでも長々と質問する株主がいて、少々うんざり。こういう株主は、質問したいんじゃなくて演説したいんだろう。議長から何度も「簡潔に」と注意されている。

総会後の事業説明会は、毎年テーマを絞ってプレゼンテーションが行われる。今年のテーマは金属加工だ。それだけじゃ何をやっているんだか分かりづらいが、素材メーカーというのはそういうもの。だからこうして説明を聴く価値がある。すると、製品が意外なところに使われていたりして、面白い発見もある。

さて、美味しい食事は供されるし、お菓子は持ち帰れるし、昨今の世間の風潮からは少し外れて見えるけれど、この株主総会に参加していると、コーポレート・ガバナンスとかインベスター・リレーションとかいう表現で表されることの在り方について、色々考えるようになる。こうした鷹揚な株主総会は、今どきの流行ではなかろうが、別に遅れた考えというわけではないと思う。

ここでは、プレゼンテーションに加え展示も豊富。帰り際には参加者がアンケートに色々と書き込んで帰る。株主の理解を深めるために真摯な努力をしている、まっとうな株主総会だ。食事も含めて、株主が家族でやってきて楽しむというのも悪くない。有名なウォーレン・バフェットの株主総会(バークシャー・ハザウェイ)だってそうやっている。多くの株主が元社員であると考えると、退職後の福利厚生の一環と考えてもいい。会場でのミニコンサートも、秋田の地元の若いミュージシャンに演奏の場を提供しているという意味で、地域に貢献する文化活動だ。

株主優待でもそうだけれど、個人株主に対する特典には、不公平だとか無駄な出費だとか、何かと批判が起きがちだ。そういう面もあるだろうが、批判するのは、概して機関投資家に近い立場に居る人間だろう。「社外」であるはずの取締役にいいお給料を払っていることに比べたら、自腹で事業報告を聞きに来る個人投資家に多少振る舞うくらい、どうということはない。株主の側も、食事だけ食べに来たりおみやげだけもらいに来たり、そういう品の無いことはやめてほしいけれども。

2016年の株主総会
2013年の株主総会
2009年の株主総会
2008年の株主総会

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6月23日 川崎汽船の株主総会 会場の前でテレビカメラが取材 [株主総会]

持ち株の中でも成績底辺レベルの銘柄。いつ売ってもいいんだけど、と思いながらまだ持っていた。仕事と違って個人投資家には色んな理由があるものだ。PBRが1倍を大きく割ってからは、株価の下にも限界があると高を括っていたら、「B(純資産)」がみるみる小さくなって、割安感が無くなってしまった。PBRで割安株を物色すると、こういう罠に落ちるので注意しましょう、という典型。買った時はそういうわけではなかったんだけれど…。

総会会場のビルの前にテレビの取材スタッフがうろついている。その時は大して気にもしなかったが、夜のテレビ東京のWBSで取り上げられていた。昨年大株主の村上ファンドの反対票で、社長が危うく不信任となりそうだったという話。今回は輪をかけて業績が悪いわけだから、社長の再任が承認されない、なんてこともあり得たわけだ。

会場内は空いていて、ゆったり座れる。通路をはさんで隣りはスタッフ席。スタッフの女性が熱心に、何を書いているのだろうと覗いてみたら、速記だった。速記なんて国会でしか見られないもののように思っていた。生で速記しているところを見るなんて初めてだ。

とにかく部門を細かく分けてみても黒字の事業が無い、という感じ。例外は不動産管理事業ぐらいだろうか。典型的な市況産業だから必然ではあるんだろうが、事業報告を聞いていると、景気や市況など事業環境の部分が長い。どうしても、「市況のせいで業績が悪い」という説明になる。だからどこか人のせいにしているように聞こえてしまう。

長期的な方針の中に、戦略転換して次代の中核事業を育成するのだ、と謳っているのだけれど、聞いてみれば何か具体的な案件があるというわけではない。物流事業なんかいいんじゃないかな、というぐらいのレベルで、真剣に取り組んでいるのかどうかは不明。エネルギーのバリューチェーンという言葉も出て来て、採掘から製品の輸送までの一貫した物流サービスということのようだが、設備投資がかかる話だから、良いパートナーを見つけて…と最後は言葉を濁している。つまり、できればいいなと思うけど、お金がかかるし、1人じゃリスクをとり切れないということ。話を聞いていても、できる気がしない。

業績が悪くて無配なのだから、社員や取締役も報酬カットされるのは当然だ、という株主。これに対しては、役職によって幅はあるが1年前より15~25%の減俸、コンテナ船事業の3社(郵船、商船三井と)統合などもあって、社内の危機感は十分にあるという回答。減俸も統合も良いと思うが、ここまで業績が悪いと、良くなる日が一体来るんだろうかという気分になる。

それ以上厳しい発言をする株主も無く、期待に反して(?) 何の波乱もない総会だった。社長の首はつながったわけだ。もう一つの議案は株式の併合で、株式数が1/10になり、株価が10倍になる。投資価値に実質的な影響はないが、株価の名目値が高くなると、下がる余地が出て来てしまうようで、何となくありがたくない。


→ テレビ東京のニュース

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6月20日 小松製作所 製品展示会もあればもっと良かったけれど [株主総会]

小松製作所は私のポートフォリオの中では比較的新顔なので、総会出席も初めて。会場は都心部のホテルだったけれど、去年まではビッグサイトで開催していたらしい。製品展示会を同時に開催していたのだとか。後の質疑応答で判明した。なぜやめてしまったのか、再開されるのか、という質問だったわけだが、ビッグサイトがオリンピック開催の影響で使えなくなったとの回答。何せ超重量級の製品が並ぶわけだから、やわな会場では開催できないのだ。見られたはずの製品展示が無くなったとは残念。オリンピックの副作用がこんなところにもあるとは。

ここ数年の業績は、はっきり言ってパッとしない。特にこの2年は、結構な幅の減益だ。長期見通しを示した資料にも、あと2年ぐらいは低迷するような図が載っている。かつてのような中国市場の急成長はないだろうし、しばらくは我慢の時期が続くというわけだ。資源・エネルギー市場も落ち着いてしまって、鉱山関係の盛り上がりも当面期待できない。

コマツの株価というのは、リーマンショックから回復した後はきれいに3000円と1500円の間を行ったり来たりして、そこそこ忠実に業績を反映している。新たな成長の兆しが出て来るまでは、ずっとこんな感じなのだろう。次に成長の兆しが見えてくるまでの雌伏期にやることと言えば、研究開発とM&Aということになる。で、前年度決算直後の4月には、Joy Global社という米国の鉱山機械の会社を買収している。

社長はどうも話が上手い方ではないらしく、棒読み調のプレゼンテーションにビデオを織り交ぜながらの事業報告は、何となく物足りない。しかしその分を補って、質疑応答は内容の充実したものが多かった。

最初の質問は、JoyGlobal社の買収について。きちんと調べて書いたレポートを発表するように、理路整然とした質問ぶりで、石炭依存度の高いJoy社の将来性に対する疑問を表明してみせた。回答もまた的確に、くど過ぎもせず、買収の決断について説明している。用意されている資料も上手く質問に答えているし、ちょっと出来過ぎなので、この一問目はもしかするとサクラかも、と思わないでもない。

その後もこの買収についてはいくつか質問があった。買収金額が約3000億円と大きいので、心配するのは当然だ。エネルギー資源としての石炭は重要な地位を占め続けるだろうという見通しは、私は基本的には賛同するし、今のように、マーケットがどちらかというと弱気に傾いているような時にこそ、買収の好機ということもあり得るだろう。それでもやはり、買収対象が質の高い会社だったのか、価格は高すぎなかったか、といった点を株主に十分説明することは、とても重要なこと。

社外取締役についての質問。そのうちの一人が7社も兼任しているが、本当に稼働できているのか。また、社外取締役に賞与を出すというのはおかしいのではないか。・・・これはコマツの問題というより、社外取締役の在り方に関する疑問といった方が良いかもしれない。これに対しては、回答も的確に答えることが出来ていないと感じた。

最初の疑問は、私もいつも感じていること。多く兼任すると、それぞれの企業に対して十分な時間を割けなくなるはずだ、という先の質問の主旨だけでなく、1人の人物が、そんなに何社もの経営情報を握っている事態は、どうしても健全とは思えないのだ。社外取締役の賞与についても、賞与どころかそもそも報酬を貰っている時点で、厳密には社外ではないというべきなのだ。

充実した質疑応答も終盤にかかったところで、かなり高齢の男性が、株主優待についての質問。300株を3年間保有するともらえるんですよね、と。自分は200株持っていたが、そのことを知って某年に100株買い増したのです、だからもらえるんですよね、というあまりにも他愛のない質問に、会場の空気がどっと緩み、方々で低い笑い声が沸き起こった。

株主優待にしても今日の総会みやげにしても、要は「おもちゃ」。モデルカー、ミニカーの類だ。特に株主優待の方は非売品で、好きな人には良いコレクション・アイテムかもしれない。総会みやげのミニカーも、このくらいなら愛嬌で、これを貰いに来るおみやげハンターもそうそうは居ないであろうし、センスのあるおみやげと言えるんじゃないか。

終わってみると、社長のプレゼンは棒読みだったものの、質問に対する答えはかなり充実。何人もの取締役が回答に当たり、結果的に全体としては良いプレゼンテーションになっていた。これで、去年までやっていたという製品展示会が付いていれば、かなり満足度が高かっただろうと思う。

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