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25年来の高値 [投資スタイル]

先週は日本株が、25年来の高値を更新しました。こういう時に、個人投資家としての私は何を考えているか、というお話。

聞くところによると、多くの個人投資家はせっせと保有株式を売っているんだそうです。上がったものはまた下がる、だから高いうちに売っておこうと考えるのは自然なことです。特にこのひと月の上がり方は、さすがにスピード違反の感があります。また、日本株はもう長年、上がり続けるという経験をしていないので、ある程度上がったら売るという態度が身についてしまっているということもあるでしょう。

【株価の現状】
改めて株価の現状を確かめてみましょう。少し長めの期間を眺めると、日本株は、途中で若干の中断はあったものの、過去5年間上昇傾向にあります。アベノミクスのスタートする少し前からですね。その間景気もずっと拡大傾向です。景気拡大の期間がいざなぎ景気を超えた、と先日も報道されていましたね。上昇している株式の顔触れも、「景気敏感株」と言われる銘柄群が中心で、ほぼセオリー通りの業績相場ということがわかります。

景気拡大に伴って企業業績も良くなっているので、株価の評価は先週一番高かった火曜日の終値でもPERが17倍弱と、まあちょっと高いかな、という程度。配当利回りは加重平均で1.8%ですから、そう悪くはないと思います。そんなわけですから、慌てて売らなきゃならない、という感じもしていません。

この先上がるか下がるかをここで予想するのが目的ではありませんが、今後起こり得るシナリオとしては、景気がピークアウトして業績が悪化し始める、ということはあり得ます。だから株価を予測したいと思えば、今の景気があとどのくらい続くのか、ということが重要になってきます。景気の拡大がすでにかなり長く続いいているので、警戒する向きが多いのも頷けます。株価は景気より先行するので、早めの売り、という選択をする投資家も多い、ということになります。

このところ立て続けに人気エコノミストの講演会を聴講しましたが、どちらのエコノミスト氏も、景気拡大は案外まだ続きそうだということをおっしゃってました。そうなると今度は、企業業績はピークアウトせずに、来期さらに1割ぐらい増益になる、なんてこともあるかもしれません。株価の評価を見ても、当分大丈夫という感じになってきますね。

【買う? 売る?】
ここは買いなのか売りなのかという問いは、トレーダーの視点ではそれなりの回答があると思いますが、資産運用的には「それは現在保有している資産の内容による」としか言いようがありません。もし株式を全く持っていないというのであれば、ここからでも少しは買っておいた方がいいよ、とアドバイスするでしょう。個別に投資するのであれば、この局面でも上がっていない銘柄は色々とあるわけです。しかしもうそれなりに投資しているのであれば、売るべきものがあるかもしれませんね。やはり全体が急ピッチで上がっているので、私もどちらかと言えば売る方を中心に考えることになります。

そもそも売るつもりが全くなければ、株価が上昇しようが高値更新しようが全く関係ありません。株価が高くなって利益が出ていると言っても、それは評価益にすぎないということを、ぜひお忘れなく。ひどく心配するほど高いわけではないので、ここでは何もせず放っておいても構わないと思います。

売ってしまえばリスクがなくなって安心だ、という考え方は、現金を使うあてがあるならともかく、そうでなければあまり感心しません。もう二度と買い戻すつもりがないとか、再び買えなくても後悔しないとかいうものを売るのは良いと思いますが、一旦売って下がったらまた買おう、ということなら、私は売らずに放っておきます。思惑通り株価が下がって上手に買い戻して得られる利益と、思惑通りに下がらなかった場合の逸失利益のどちらが大きくなるか、そんなことを予想しようと思わないからです。一旦売ったものを、売値より高く買う、という決断をするのはなかなかエネルギーの要るものです。

そんなわけで私は、もう買い戻さなくてもいいと思う銘柄を選んでいくらか売る、ということになるわけです。上がり過ぎたものを減らすのも一つですが、ずっと売りたくて我慢していた銘柄、というのもあります。どうせ売るなら高い時に売りたいですからね。そのほかに考慮することがあるとすれば、課税される利益の有無でしょうか。そうなると、同じ売るなら課税されないNISA口座優先・・・ということになるかもしれませんね。

NISAという制度ができた時には、個人投資家に長期保有をさせよう、という意図があったと思うのですが、お役所の思う以上の長期を視野に投資している個人投資家からすれば、現在のNISAなどというのは、保有期間を縮める要因にしかなりません。(苦笑)



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外貨を持たなくちゃならない? [投資スタイル]

先週末、「経ママサロン」を開催しました。
これは私の主宰している「経済に強いママを増やす会」で不定期に開催している、口コミベースのゆる~いセミナーです。
この日のお題は「個人型確定拠出年金(iDeco)」がメインで、経ママ仲間の岩城さんにお話ししていただいたのですが、そこから資産運用の色んな面に話は発展しました。その一つに「分散投資」、特に外貨分散、という話がありました。

教科書的な話をすれば、資産はできるだけ広く分散すべきで、当然外貨も持つべき、ということになります。聞かれれば私もそう答えるでしょう。しかし今現在、自分の資産に外貨を持っていない人は、たくさんいらっしゃると思います。資産運用について少し学んで、外貨を持つべきだ、と納得していただくのはよいのですが、あまり「外貨を持たなくちゃ」と、焦ることはないと思うのです。

このところ外貨建ての保険商品を勧める金融機関が多いと聞いていますが、どうみても大してお得ではない、というか全然お得ではない外貨建ての商品をつい買ってしまうのは、この「外貨を持たなくちゃ」、という意識からくる場合もあるのではないでしょうか。

外貨を持つということは、為替変動のリスクを引き受ける、ということです。最近は世界中低金利で、魅力的なほどの金利差を得られる機会も減りました。リターンが生まれるのは、主に円安になった場合です。逆に円高になれば損をするわけです。

さて、もしあなたが外貨を持っていない状態で円安になってしまったら、あなたは「ああ、外貨でとれたはずの利益を取り損なった」と思うでしょう。一方、外貨を持った状態で円高になってしまった場合、あなたはストレートに「損した!」と思うわけです。同じ損をするのでも、両者の感じ方はかなり違うのではないでしょうか。あなたが非常にソフィスティケイトされてグローバルな感覚を持った人物であっても、日本に住み、日本円で生活している限り、外貨で取り損なった得べかりし利益と、円建てて減ってしまった自分の資産を、同じ気持ちで感じることはなかなかできないと思います。

ですから私はいつも、外貨を持つのはいいけれど、ホームバイアス(自国資産を多く持つこと)大いに結構、と言います。自分でよくわかり、情報も豊富にある自国資産を多く持つことは決して間違っていません。近くにあってよくわかるものと、地球の裏側にあって何が起きているかわからない資産は、決して同列ではありません。

日本人として日本にずっと住んでいると、日本の悪いところは非常に目につきます。人口構成の問題、財政赤字や巨額の国家債務、企業の不正、国際競争力の劣化・・・。そこへ持ってきて外貨に分散投資せよ、と言われれば、外貨、外貨、と焦ってしまうかもしれません。しかし、外国に住めばこんどはその国の悪いところも見えてきます。どの国も地域も、それなりに色々な問題を抱えています。

現状の円の評価は、正しいかどうかは別にして、何か不穏な出来事があれば、世界中の人が日本円を買う、という状態にあります。不安なのは、何も日本人だけではないのです。また、外国為替の理論値は原則として、物価の上昇しがちな国の通貨が安くなります。ここで将来の物価動向を予測するつもりはありませんが、日本の物価が他国を大きく引き離して上昇する、という経済状態は、まだ当分の間起きないのではないかと私は思います。

私も外貨資産を持っていますし、海外に投資することを否定するつもりはさらさらありません。ただ、外貨に分散しなきゃ、と思うあまり、お得でもない外貨商品を買ってしまうくらいなら、円資産の上にどっかりと落ち着いていた方が良いと思いますよ、というお話でした。

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株しかない? [株式投資色々]

株価が高値を付けているからなのか、最近ネットで「株しかない」という本の広告を見かけて、またまた煽るようなタイトルつけるんだから、いやになっちゃうわ、と思ったのですが、考えてみると私も同じようなことを言っているんですね。先日も友人から、老後に備えての相談事。よくある類の質問でしょうが、「減らしたくはないんだけど、どうしたらいい?」と。(ちなみにその書物は読んだわけではないので、内容については全く存じません。単なるタイトルの印象。)

減らしたくないけど増やしたい。ご要望に沿いたいのはやまやまですが、今、元本保証がありながら、資産が増えるほどの金利がつくものは、はっきり言いますが、無いわけです。それをはっきり言いたくないものだから、アイデアを絞って色んな金融商品が考え出されているのでしょうが、そういうものは無い、というのが基本です。国債や銀行預金の金利がかぎりなくゼロに近い時、何をどうこねくり回しても、無から有は生まれないのです。

金融収益というのはリスクに応じた金利です。金融業というのはリスクに金利という値段をつける仕事、と言ってもいいと思います。金利という形の値段も、ほかのものと同じように市場で決まりますから、同じだけのリスクには、同じ値段しか付きません。減らしたくない、銀行預金や国債と同じように元本を保証してほしい、と思えば、それにつく金利も同じようなレベルになります。それをごまかすために色々な工夫をすれば、それだけコストもかかるはずですし、金利に応じたリスクをどこかでとっているはずなのです。

ちょっとの間も減らしたくないならば、増やそうと思ってはいけません。「減らしたくないんだけど」…という相談に対する答えは「銀行預金か国債」ということになります。現状、個人向け国債で0.05%ですから、これをどう割り振ってもほとんど何も起こりません。それは嫌だというならば、投資信託も含め「株式を買うしかないんじゃない?」と私も答えるでしょう。もちろん、人によって、何のリスクをとりたいかは違います。外国為替がいいとか、不動産がいいとか、いろいろあるでしょう。個人的には「株式がいいんじゃない?」と思いますが。



ご参考→ 株式は債権より儲かるのか、というお話
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悪い話が出た時は [株式の個別銘柄]

ここで個別の銘柄をとり上げることなんて、そう頻繁にはやっていないにもかかわらず、日産の配当利回りについて書いた直後に大規模なリコールのニュース。リコールは車には付き物だとはいうものの、あまり気分のいいものではありません。悪いニュースには違いありませんから。

以前から書いていることですが、株式を保有したら、気にするのは配当が減ることだけ。株価が下がることを心配するのではなく、配当が減ることだけを心配するのです。だからこういう悪いニュースが飛び込んできた時も、それによって配当が減るかどうかだけを考えるわけです。

新聞記事によれば、リコールにかかる費用は250億円以上とのこと。「以上」というのは気になりますが、さすがに見込みの5倍や10倍に膨らむようなことはないでしょう。リコール以前の会社発表では、今期の純利益は5350億円、これに対して費用が250億で済めば、純利益の4.6%ということになります。その倍に膨らんだならば9.2%、1割弱ですね。そのくらい見積もっておけばとりあえず保守的と言ってよいでしょう。

さて、純利益が1割これによって吹き飛ぶとして、配当には影響があるでしょうか。日産自動車の配当性向は、先ほどの予想純利益5350億円に対して38.7%、これは、一株当たりの予想配当=53円 を、一株当たり純利益=136.8円 で割って算出します。つまり純利益の4割弱が配当に回っているということです。ということは、純利益が1割減っても、配当を減らす必要はありません。

それでも配当が減るとすれば、それは今回のリコールが、今後長きにわたって悪影響を及ぼすという判断をする場合でしょう。今回の事例を新聞等で読む限り、製品自体に欠陥があったというわけではなく、製品の検査に際して法令順守を怠ったということです。今後は製品検査の体制を改善しなくてはいけませんが、それは会社として当然のこと。適切な対処を期待してもよいと思います。

ただ、会社がコンプライアンスに甘い体質である、という印象は残りますね。それで会社の評価が低くなるということはあり得ます。ここで甘ければ、ほかで似たような失敗をしているかもしれない、という発想にもつながります。実際に似たような失敗が起こり、配当を減らさざるを得ないようなダメージがあれば、そこで初めて、この投資は失敗だったかな、ということになります。印象の悪化のみで株価が下がれば配当利回りはもっと高くなるので、投資額は増やすのが正しい、ということになりますね。

そんなことを考えながら、投資するのかしないのか、増やすのか減らすのか、…どちらの答えが正しいというものではありません。自分がどういう期待を持って、どんなリスクをとって投資判断しているのか、ということが大切です。


ご参考 私流 株式投資

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日産自動車の配当利回り [株式の個別銘柄]

2~3日前、株式関連の番組で、視聴者の投稿なのか、ジェレミー・シーゲルの「株式投資の未来」を読んだら配当を重視して株式投資すると書いてあってショックを受けた、という話をしていました。投資の意味が全く分からないまま投資している人が、相変わらず多いということなのでしょう。お陰さまで、それほどハイリスクでもないのに配当利回りが高くてハイリターンな投資対象が、今も放置されているわけです。皆が配当を重視して投資するようになったら、こうはいかないかもしれません・

現在の株式市場で、誰もが知っているような大企業で最も配当利回りが高いのは、多分日産自動車じゃないかと思います。会社発表の今期配当で計算して、現時点で4.6%です。どうしてこんなに高いのでしょうか。投資家が配当を重視しないからと言っても、いくらなんでもねえ、と私は思うのです。そこで、こんなにも配当利回りが高いのはどうしてか、理由を色々とつけてみました。

理由をつける前に、まず業績を見てみると、減益ではありますが、売り上げが減るわけではないし、そもそも配当性向が低かったこともあり、配当を予定通り支払うのに全く支障はなさそうです。しかも増配です。会社予想が53円/株のところ、四季報では53-59円ということですから、会社発表よりも多いかも、と予想しているわけで、上限の59円もらえたら、利回り5.1%です。すごい!

ここ数年の配当の推移を見ると、かなりのペースの増え方です。四季報のページで見られるのは4期前までですが、その時30円ですから、今期53円として、年15%のペースで伸びてきているわけです。この増配のスピードが速い、ということが高配当利回りの要因の一つでしょう。株価が増配ペースについてきていない。業績がそんなに伸びていませんからね。株式市場はいつのころからなのか、もうずっと成長志向なので、どうしても売上や利益に反応します。日産の業績も悪くはありませんが、今後もずっと伸び続けると簡単に予想してくれるほど、マーケットは甘くありません。

さて、まず「自動車」という業種。このところEV(電気自動車)や自動運転技術の話題が盛んです。技術的な革新が起こりそうな予感に、投資家も浮足立っているといった感がありますね。その中で既存の自動車会社は攻め込まれる立場にあるわけです。台数の普及も地域によってはまだまだ進むと思われますが、それよりも技術革新で苦境に立たされるのではないかという思惑の方が強く働いているようです。それを反映してか、日産に限らず自動車メーカーの配当利回りは全般に高めです。

未来の車がどうなるか、そして既存のメーカーの立ち位置がどうなるか、あまり正確に見通せるとは考えないほうが身のためです。予想については謙虚に参りましょう。現在のマーケットの見方は、少し既存のメーカーに厳しすぎるような気がしますが、どうなんでしょうね。自動車というのは、なにしろ家電などと違って人命を預かるものですから、動力系の変化だけですべての勢力図が変わる、というものでもない可能性はあります。また、電気自動車には電力が必要だということも忘れてはいけません。巨大な人口を抱える中国もインドも、発電には環境問題やインフラの問題を抱えていますよね。大きく勢力図が変わるにしても、時間がかかることはほぼ確実なのでは、と思います。

それから「日産」という会社への評価。超長期的なスパンで見れば、最先発のメーカーではあったものの、トヨタをはじめとする後発のライバルに追い上げられ、追い越され、記憶にある限りずっと右肩下がりの会社、というイメージです。バブル後日本経済が低迷すると、経営は潰れそうなところまで悪化して、仏ルノーの傘下に下りました。そんな会社ですから、基礎となる評価はどうしても低くなりがちなのです。また、規模も非常に大きいので、簡単に変われるとも思ってもらえないでしょうね。株価の評価というのはどの業種でも、そう簡単にランクが変わったりはしないものです。

日産の場合、もう外資系ですから、海外自動車メーカーの配当利回りの影響が同業他社より大きい可能性もあります。業種が当然同じですから、海外メーカーだって同じように厳しく見られているわけです。親会社のルノーは3.8%とのことですが、ドイツ車は、スキャンダル渦中にあったVWはともかく、BMWもダイムラーも4%台です。アメリカ車、GMは3.8%、フォードは5%に載っています。(データはいずれもBloombergより。) その中で4.6%のNissan、というのは、しっくりくるというべきかもしれません。

こうして見てくると、日産の4.6%というのは、特におかしな値ではない。他の日本メーカーとのバランスで、もう少し低くてもいいのかもしれないけれど、国外に目を向けると、そんなに下がらないかもしれない。つまり、配当利回りが高いという理由で株価が上がるということにはそれほど期待せず、この高い利回りを目的に買う、ということなら良さそうです。もちろん、業績が伸びて配当も増えれば株価は上がるでしょうね。この配当利回りの水準は、国際的に見ても高い方ですから。



ご参考 → 私流 株式投資

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コーポレート・ガバナンスの四象限 [株式投資色々]

先日のセミナーの準備で、コーポレート・ガバナンスの話題に触れようと少し調べていたら、良く整理されていてわかりやすい図を発見したので、ここにもちょっと紹介しましょう。(クリックで拡大)

CorporateGovernance(L).png

これは「比較コーポレート・ガバナンス論」(菊澤研宗著)という本にあったものです。
「コーポレート・ガバナンス」はアベノミクスの看板のひとつなので、ここ数年はかなり人口に膾炙しているのではないかと思いますが、これがコーポレート・ガバナンス、という説明はなかなか難しいのではないでしょうか。実際色々な側面があって、非常に幅広い文脈で語られています。

多くの方は「コーポレート・ガバナンス」と聞いて、環境保全のために植林活動してます、とか、女性の働き易い職場環境を整えてます、とか、積極的に社会を良くするための努力をしている企業を思い浮かべるかもしれません。とりたてて積極的にというわけではなくても、法令遵守=ルールを守ること、がガバナンスと考える人もいるでしょう。

一方、アベノミクスで特に目立つのは「ROE」の重視、そして「社外取締役」の任命などではないでしょうか。ROE(資本収益率)の高い、つまり資本を効率よく用いて利益を稼ぐ会社や、社外取締役が経営に目を光らせている会社が、ガバナンスの優れた会社であるという考え方です。

これらは、社会を良くする努力や法令遵守とは、かなり違うように見えます。「コーポレート・ガバナンス」と言っても、様々な側面があるので、どのように考えればよいのか、混乱しそうですが、上掲の図では、コーポレート・ガバナンスの考え方を、「企業対社会」という視点「企業対株主」という視点に分けています。そしてそれぞれが、倫理の次元効率の次元に分かれ、全体が四象限に整理されています。

環境保全や職場環境の整備は、企業と社会の倫理問題ということになりますね。法令遵守もそうです。企業経営は社会に対して誠実であれ、ということ。これに対してROEの重視は、企業と投資家の効率問題、ということになるのでしょう。そして社外取締役の任命は、企業と投資家の倫理問題。社外取締役というのは、経営者が投資家に対して誠実な経営をしているかどうか監督する、という性格のものですから。

ROEの重視企業と投資家の効率問題、と書きましたが、アベノミクスの文脈では、社会の効率の問題としてとらえているように感じます。企業のパフォーマンスが良くなって投資家の利益が増えることより、それによって経済の成長力が高まる、ということに関心が向けられているようです。「投資家」の多くは実は国民自身でもあるわけですが、投資家のための政策では支持率に繋がらないという政治の現実を考えれば、その点が強調されづらいのは無理もありませんね。

コーポレート・ガバナンスのどの側面に光が当たるかというのは、国の事情や時代背景を反映しています。今日本でROEと社外取締役の側面が浮かび上がっているというのは、そこに課題があるからだとも言えます。特にROEの重視は、まさに日本企業の経営に必要とされていた視点でしょう。個々の企業にとっても、それが経済全体に及ぼすインパクトについても、ROEの水準が引き上がることは、大きなメリットがあると思います。

アメリカでは、社外取締役に大きな権限を与えることによって株主の権利を守ることができるという考え方が、一般的なようです。そのことの是非はともかく、そう考えるようになった経緯は、それなりの歴史的背景があります。日本でも法改正により、株式会社は社外取締役を置くよう求められていますが、アメリカとは全く違う歴史をたどっている日本企業で、実際に任命されている社外取締役は、かなり性格の異なるものであるように見えます。

コーポレート・ガバナンスは、永遠の課題とも言えるかもしれません。他所から借りて制度を作るようなものではなく、手探りで追究していくもの。日本では日本なりの、コーポレート・ガバナンスの歴史ができていくのでしょう。


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株式投資ってどういうこと? というセミナー [セミナー企画]

8月の下旬に、セミナーをアレンジしてくださる方があって、株式投資についてお話しすることになりました。メインタイトルは「株式投資ってどういうこと?」。1月にお話しした時と同じタイトルで、中心となるメッセージは同じですが、投資周りの話題を少し更新してお話しします。

株式投資についてお話ししたい、ということをずっと昔から考えているのですが、それをメインの生業にしようと思うと、短期志向の話をしなければなりません。そしてこの先3カ月や1年のうちに金利が上がるとか下がるとか、株式が10%上がるとか下がるとか、または上がる株はこれ!とかいう話をしなければなりません。お話したいのはそういうことじゃあない、というのは、このブログを読んでくださる方にはすでにお分かりだと思います。だから、どこかからお給料をいただくためにあくせく働くようなことをしなくてもよい身分になって、初めてこういう話をしているのです。

私がお話したいのは、株式市場の本来の姿投資というものの考え方についてです。株式市場でギャンブルするのはご自由にどうぞ、ですが、それは株式市場の姿のほんの一部であるということ。株式市場は経済の成り立ちに非常に重要な役割を担っているということ。ですから同時に株式投資家は、経済に重要な貢献をしているということ。また、株式には価値があるということ。その価値は企業とともに成長するということ。その成長の恩恵を、多くの投資家に享受してほしいということ。…

株式に投資するってどういうことかわかったうえで、投資信託を買おうと思うならばそれもよいと思います。でも、興味がおありなら、直接株式に投資する、ということも考えてみていただきたいですね。個人投資家として無理なく資産を運用するにはどうすればいいか、という話です。個人投資家にとって、投資信託はもちろん重要な投資商品です。でも、投信業界を長く見てきて思うのは、この業界が満足のいく水準まで良くなるのを待っていたら年を取っちゃう、ということ。老後は待ってくれませんからね。

(1月のセミナーについてはブログには載せていません。Facebookに写真がありますが。)

8月のセミナーにご関心のある方はこちら。
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パリ祭・フランス革命・歴史の蓋然性 [市場と経済色々]

7月14日といえばパリ祭。フランス革命の発端となったバスチーユ襲撃事件のあった日ですね。(我らベルばら世代にはお馴染みです。)

高校のころ、世界史の先生がこんなことをおっしゃいました。
「この日パリはものすごく蒸し暑かったんです。だからみんなイライラしてた。そうじゃなければ、バスチーユを襲撃しようなんて、思わなかったかもしれないんです。そうしたら、フランス革命も起こらなかったかもしれないの。こういうのが歴史の蓋然性ね。」と。
私は「蓋然性」という聞きなれぬ言葉に少々面食らって、その時はピンと来たというよりは、ちょっとおもしろい、というぐらいに思ったという覚えがあります。

長じて資産運用にかかわるようになり、リスクとどう付き合うかという課題と日々向き合うようになって、よくこの言葉を思い出すのです。将来を予想するというのは、もっと正確には、将来「起こり得ること」を予想しているのです。そしてリスク管理するということは、その起こり得る確率を想定することなのです。

あのフランス革命でさえも、起こる前は、蓋然性に過ぎなかった。つまり何%かの確率で起こり得る事象のひとつに過ぎなかったのです。学校で習う歴史的な出来事は、あたかも必然的に起きたかのような錯覚とともに記憶されますが、実はどれも、起こらなかったかもしれないことばかり。誰かが気まぐれでとった行動が、大きく歴史を変えることもあるわけです。それを「クレオパトラの鼻」と表現することもあるのでしょうが。

日々生じている市場での出来事も、常に理由があって必然的に起きたように解説されます。しかしどの出来事も、起こらなかったかもしれないのです。起こるか起こらないかわからない、そのことを「リスク」というのですね。そしてそもそも「金融」というのは、そうした「リスクに値段をつける作業」と言っていいのではないでしょうか。

毎年7月14日が来ると、改めてこうしたことを思い返すのです。歴史の蓋然性について語ってくださった恩師は、今も御年九十三でご健在です。


似たようなことを最近書いていました。→ リスクと確率

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6月28日 シーズン最後は地味な倉庫会社 [株主総会]

シーズン最後は「ヤマタネ」という倉庫会社。自分のポートフォリオでは比較的新顔だ。1924年創業というから、もう100年近い老舗で、数字を見る限り、特に成長しているような企業ではなさそう。全体に売上は減少しながらも、不採算案件を減らすことによって利益率は改善傾向、というのがここ数年の業績動向だ。ただ売上げの半分近くが、「コメの流通」という謂わば商社のような部門、残り半分は物流や情報サービスや不動産賃貸で、利益率の水準が全然違う。コメの流通というのは、どのくらい収益性を高められるものなんだろう。知識不足で何とも言えないが、投資対象としてはおおよそ魅力的な事業には見えない。

株主総会は、想像していたよりもずっと盛況だ。業績の勢いとは不釣り合いなぐらい。元社員と思しき株主に交じって、私のような単なる個人投資家らしき株主もちらほら。女性もいなくはない。事業報告・今後の展望とも、招集通知に載っていることを淡々と朗読して終わったが、株主質問は意外にも活発だ。

初めの質問者は、念入りに準備した書付を読み上げて質問。話の内容から、会社のOBとわかる。各種メディアで伝えられたことの詳細について質問している。取得した土地の活用計画であるとか、残業時間をどうするかとか、「プラットフォーム型ビジネス」についてとか、盛りだくさんだ。そして、株主からどんどん意見の出るような株主総会になるよう工夫してほしいとの要望。なんと模範的な株主であることか。長年勤めあげた古巣への愛社精神なのだろう。

社長が回答する中で、自社の競争力をどう捉えているかが理解できたし、既存の事業だけを続けていてはいけないという問題意識が十分に伝わってきた。気になるコメの流通については、他社も苦労するコメの配送だから、他の食糧へ広げていくことができるんじゃないかという話。ぜひ形にしていただきたい。そのほか物流と不動産事業のシナジーを活かすとか、どちらもIoTの技術が不可欠になるとかいった展望が参考になった。

次は、PBRが大きく1を割っていることについてどう思うか、という質問。私から見れば答えは簡単。配当を倍にすればよい。配当性向低すぎ。社長からはこれといった回答はなかったが、さらに次の株主が、配当が少なすぎるのではないか、と質問。配当性向は30%あっていいと思うので検討・努力いたしますとのこと。配当性向は3割よりももう少し高くていいと思うけれど…。

その次は、「株主優待で貰うカレンダー、せっかくいい絵なのに印刷が雑だ」とのご意見。発言したのは、質疑応答の直前くらいにずい分と遅れて入ってきた女性、その堂々とした態度に社長もたじたじ。きっとこの方も長年勤めあげた方で、彼女からは若旦那の社長なんて鼻たれ小僧くらいに見えているのかもしれない。印刷は山種美術館に伝えるとして、次の株主の、「優待でヤマタネブランドのコメが欲しい」という要望には、これまでも検討した結果踏み切っていないのだとの回答。タダでさえあまり儲からないコメの流通なんだから、これ以上負担を強いるのはちょっと考え物、というのが私の感想。

地味な倉庫会社の、記念品が出るわけでもない、展示物があるわけでもない株主総会に、これだけ株主が集まって真剣な質疑応答があるというのはうれしい驚き。この先投資対象としてもっと魅力的な会社になればもっと嬉しい。

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6月27日 優雅なだけじゃない、DOWAホールディングス [株主総会]

自宅から会場まで徒歩圏だということもあり、都合がつく限りは出席している。関連会社でもある椿山荘(藤田観光)で過ごすひと時が楽しみであることも確か。その優雅な雰囲気は過去のレポートお読みいただくとして、今年は去年のようにおみやげハンターが目立たなかったのは良かった。おみやげ自体は例年通り配られたが、世間一般おみやげの配布が減っているので、もらうことだけを目的とした総会巡りは、もしかするとピークアウトしたのかもしれない。

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株主総会自体にそれほど盛り上がりはない。業績はおおまかに言えば横ばいで、目立った傾向も無かった。株主総会の後に事業説明会があると分かっているので、事業についての質問はあとで聞けばよいということもある。それでも長々と質問する株主がいて、少々うんざり。こういう株主は、質問したいんじゃなくて演説したいんだろう。議長から何度も「簡潔に」と注意されている。

総会後の事業説明会は、毎年テーマを絞ってプレゼンテーションが行われる。今年のテーマは金属加工だ。それだけじゃ何をやっているんだか分かりづらいが、素材メーカーというのはそういうもの。だからこうして説明を聴く価値がある。すると、製品が意外なところに使われていたりして、面白い発見もある。

さて、美味しい食事は供されるし、お菓子は持ち帰れるし、昨今の世間の風潮からは少し外れて見えるけれど、この株主総会に参加していると、コーポレート・ガバナンスとかインベスター・リレーションとかいう表現で表されることの在り方について、色々考えるようになる。こうした鷹揚な株主総会は、今どきの流行ではなかろうが、別に遅れた考えというわけではないと思う。

ここでは、プレゼンテーションに加え展示も豊富。帰り際には参加者がアンケートに色々と書き込んで帰る。株主の理解を深めるために真摯な努力をしている、まっとうな株主総会だ。食事も含めて、株主が家族でやってきて楽しむというのも悪くない。有名なウォーレン・バフェットの株主総会(バークシャー・ハザウェイ)だってそうやっている。多くの株主が元社員であると考えると、退職後の福利厚生の一環と考えてもいい。会場でのミニコンサートも、秋田の地元の若いミュージシャンに演奏の場を提供しているという意味で、地域に貢献する文化活動だ。

株主優待でもそうだけれど、個人株主に対する特典には、不公平だとか無駄な出費だとか、何かと批判が起きがちだ。そういう面もあるだろうが、批判するのは、概して機関投資家に近い立場に居る人間だろう。「社外」であるはずの取締役にいいお給料を払っていることに比べたら、自腹で事業報告を聞きに来る個人投資家に多少振る舞うくらい、どうということはない。株主の側も、食事だけ食べに来たりおみやげだけもらいに来たり、そういう品の無いことはやめてほしいけれども。

2016年の株主総会
2013年の株主総会
2009年の株主総会
2008年の株主総会

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