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コーポレート・ガバナンスの四象限 [株式投資色々]

先日のセミナーの準備で、コーポレート・ガバナンスの話題に触れようと少し調べていたら、良く整理されていてわかりやすい図を発見したので、ここにもちょっと紹介しましょう。(クリックで拡大)

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これは「比較コーポレート・ガバナンス論」(菊澤研宗著)という本にあったものです。
「コーポレート・ガバナンス」はアベノミクスの看板のひとつなので、ここ数年はかなり人口に膾炙しているのではないかと思いますが、これがコーポレート・ガバナンス、という説明はなかなか難しいのではないでしょうか。実際色々な側面があって、非常に幅広い文脈で語られています。

多くの方は「コーポレート・ガバナンス」と聞いて、環境保全のために植林活動してます、とか、女性の働き易い職場環境を整えてます、とか、積極的に社会を良くするための努力をしている企業を思い浮かべるかもしれません。とりたてて積極的にというわけではなくても、法令遵守=ルールを守ること、がガバナンスと考える人もいるでしょう。

一方、アベノミクスで特に目立つのは「ROE」の重視、そして「社外取締役」の任命などではないでしょうか。ROE(資本収益率)の高い、つまり資本を効率よく用いて利益を稼ぐ会社や、社外取締役が経営に目を光らせている会社が、ガバナンスの優れた会社であるという考え方です。

これらは、社会を良くする努力や法令遵守とは、かなり違うように見えます。「コーポレート・ガバナンス」と言っても、様々な側面があるので、どのように考えればよいのか、混乱しそうですが、上掲の図では、コーポレート・ガバナンスの考え方を、「企業対社会」という視点「企業対株主」という視点に分けています。そしてそれぞれが、倫理の次元効率の次元に分かれ、全体が四象限に整理されています。

環境保全や職場環境の整備は、企業と社会の倫理問題ということになりますね。法令遵守もそうです。企業経営は社会に対して誠実であれ、ということ。これに対してROEの重視は、企業と投資家の効率問題、ということになるのでしょう。そして社外取締役の任命は、企業と投資家の倫理問題。社外取締役というのは、経営者が投資家に対して誠実な経営をしているかどうか監督する、という性格のものですから。

ROEの重視企業と投資家の効率問題、と書きましたが、アベノミクスの文脈では、社会の効率の問題としてとらえているように感じます。企業のパフォーマンスが良くなって投資家の利益が増えることより、それによって経済の成長力が高まる、ということに関心が向けられているようです。「投資家」の多くは実は国民自身でもあるわけですが、投資家のための政策では支持率に繋がらないという政治の現実を考えれば、その点が強調されづらいのは無理もありませんね。

コーポレート・ガバナンスのどの側面に光が当たるかというのは、国の事情や時代背景を反映しています。今日本でROEと社外取締役の側面が浮かび上がっているというのは、そこに課題があるからだとも言えます。特にROEの重視は、まさに日本企業の経営に必要とされていた視点でしょう。個々の企業にとっても、それが経済全体に及ぼすインパクトについても、ROEの水準が引き上がることは、大きなメリットがあると思います。

アメリカでは、社外取締役に大きな権限を与えることによって株主の権利を守ることができるという考え方が、一般的なようです。そのことの是非はともかく、そう考えるようになった経緯は、それなりの歴史的背景があります。日本でも法改正により、株式会社は社外取締役を置くよう求められていますが、アメリカとは全く違う歴史をたどっている日本企業で、実際に任命されている社外取締役は、かなり性格の異なるものであるように見えます。

コーポレート・ガバナンスは、永遠の課題とも言えるかもしれません。他所から借りて制度を作るようなものではなく、手探りで追究していくもの。日本では日本なりの、コーポレート・ガバナンスの歴史ができていくのでしょう。


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